ラテックス事業部 相談室Q&A

こちらではお客様から寄せられたお問合せから
比較的多かった質問と回答をまとめさせていただきました。

質問および回答は、前提、背景を一般化していますので、適切ではない場合も考えられます。
詳細をご必要とする際は弊社へ直接のお問い合わせ下さいますようお願い申し上げます。

ラテックス製品について

Q

ラテックス(合成ゴム)って何ですか?

A

ラテックスとは、元々ゴムの樹から採取された白色乳状の樹液である天然ゴム液のことを指していました。
その後、天然ゴムに似た水分散体の工業的な製造法が各種確立され、それらを一般に合成ゴムラテックスやエマルションなどと呼んでいます。
特にブタジエンなどのジエン系モノマーを使用し、乳化重合法という方法によって製造されたものを「合成ゴムラテックス」といいます。

Q

合成ゴムラテックスの種類を教えてください。

A

次のような種類があります。

通称 略号 ポリマー分類 当社
製造品
天然ゴムラテックス NR 天然ゴム
SBRラテックス SBR スチレン-ブタジエン系重合体
BRラテックス BR ポリブタジエン
MBRラテックス MBR メチルメタクリレート-ブタジエン系重合体
VPラテックス VP 2-ビニルピリジン-スチレン-ブタジエン系重合体
NBRラテックス NBR アクリロニトリル-ブタジエン系重合体
CRラテックス CR クロロプレンラテックス

合成ゴムラテックスは天然ゴムと異なり、ポリマーの硬さ、軟らかさや分子の大きさを自在に調節できます。またそれぞれの用途、目的にあったモノマーを選択することにより、特徴ある性能を引き出すことができます。

Q

合成ゴムラテックスの用途を教えてください。

A

当社の合成ゴムラテックスは、現在、紙塗工、含浸加工、繊維、不織布、カーペット、土木建材、モルタルセメント、自動車用部品、タイヤコード、塗料、ペースト、防錆コーティング、各種接着剤、プラスチック改質、電子材料、など色々な用途にお使いいただいております。

主な用途と製品名についてはこちら

Q

合成ゴムラテックスの原料を教えてください。

A

当社の合成ゴムラテックスに用いられる主要なモノマーとしては下表のものが上げられます。
これらのモノマーが乳化重合によりポリマー粒子となり合成ゴムラテックスが製造されます。

ラテックスに使われる主原料

主原料
Q

SBRラテックスとは何ですか?

A

SBRラテックスは、スチレン(STY)とブダジエン(BDE)を主成分とした合成ゴムラテックスのことです。

Q

MBRラテックスとは何ですか?

A

MBRはメタクリル酸メチル(MMA)とブタジエン(BDE)を主成分とした合成ゴムラテックスのことです。
MBRラテックスは一般にSBRラテックスより耐熱性、耐光性が優れていると言われています。

Q

合成ゴムラテックスの外観・中身を教えてください。

A

ブタジエン、その他のモノマーが共重合したポリマー粒子が水中に安定に分散した乳白色の液です。
固形分濃度は50%前後です。
乾燥により水分を蒸発させると粒子同士が融着して透明なポリマ-フィルムが得られます。

Q

軟らかいラテックスと硬いラテックスがあると聞きますが。

A

様々な用途に合わせて、使用するモノマー組成により合成ゴムラテックスポリマーの硬さを任意に調節することが可能です。
例えばSBRラテックスはそれを構成する硬い成分であるスチレンと軟らかい成分であるブタジエンの共重合比率を変えることで、Tg(ガラス転移点)を-80℃から+100℃までの広い範囲で得ることができます。

Q

合成ゴムラテックスならではという特徴は何ですか?

A

アクリルエマルションやエチレン酢ビエマルションなどの似たような形態の水分散ポリマーと比較すると、合成ゴムラテックスは、ゴム弾性を有すること、および比較的耐水性が高いことが特徴です。

参考例として物性比較表を御覧下さい。

Q

カルボキシ変性ラテックスとは何ですか?

A

カルボキシル基(-COOH)をもったモノマーを共重合した合成ゴムラテックスのことです。
一般にカルボキシ変性をすることにより合成ゴムラテックスの機械的安定性や接着力が向上します。カルボキシ変性をしていない合成ゴムラテックスのことを未変性ラテックスと呼ぶことがあります。

分析・物性に関して

Q

Tgとは何ですか?

A

ガラス転移温度(Glass transition temperature)のことです。
ポリマーが低温でのガラス状態からゴム状態へと移りはじめる温度を示します。
例えば、Tgが+10℃のポリマーと-10℃のポリマーで比較をすると、+10℃のポリマー方が硬く、-10℃のポリマーは柔軟です。

Q

MFTとは何ですか?

A

MFTは最低造膜温度(Minimum film forming temperature)の略で、合成ゴムラテックスの水分が蒸発して乾燥するとき、連続したフィルムが形成されるのに必要な最低の温度のことです。
従って乾燥時の造膜しやすさの指標になります。
温度勾配板法が一般的な試験方法です。

Q

TgとMFTはおなじですか?

A

必ずしも同じにはなりません。
合成ゴムラテックスのMFTは、ポリマーのTgに加えて、ラテックス粒子の大きさや粒子表面構造の影響を受けるためです。
当社では、粒子内異層ポリマー化技術などによりTgとMFTをコントロールし、各用途に最適な合成ゴムラテックスを提供しております。

例:粒子内異層ポリマー化技術
ひとつのラテックス粒子内に異なる組成成分をサラミ状に分布させた例。粒子内に見える白い粒状が高Tg組成部分。

透過型電子顕微鏡写真
スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル合成ゴムラテックス
粒子径120nm
Q

合成ゴムラテックスは溶剤に溶けますか?

A

溶剤の種類によります。たとえば溶剤がトルエンの場合、ラテックスポリマーの一部が溶解します。一般に溶解するポリマーをゾル、不溶ポリマーをゲルと言います。
参照:ゲル含有率

Q

ゲル含有率とは何ですか?

A

合成ゴムラテックスポリマーに含まれる巨大分子(=ゲル)の含まれる割合を表す指標です。
乾燥したポリマーをトルエンなどの溶剤に漬して、溶出しなかったポリマーの分量を測定することにより求めます。

Q

合成ゴムラテックスの粒子径はどのくらいですか?

A

合成ゴムラテックス粒子の大きさは、種類により異なりますが、だいたい0.1μmから0.3μmが主です。
粒子径が0.1μmの合成ゴムラテックス液1ccの中には約1000兆個の粒子が存在していて、その合計の表面積は約30m2もあるため様々な性能に大きな影響を与えます。
当社独自の重合コントロール技術により粒子径を均一にしたり、分布を持たせたりすることも可能です。

例:粒子径分布を持ったラテックスの透過型電子顕微鏡写真
SBRラテックス 粒子径60nm~150nmの分布、平均粒子径は120nm
Q

ラテックス粒子径の測定方法を教えてください。

A

下記の4種類の方法があります。

1.透過型電子顕微鏡による測定
支持膜上に四酸化オスミウム染色で硬化させた低濃度のラテックス粒子をのせて乾燥し、金パラジウム合金でシャドウイング後、カーボン蒸着し、透過型電子顕微鏡で写真撮影する方法。

2.ラテックスの濁り度による測定
ラテックスは濃度が同じであれば、粒子径が大きいほど、その液が白く濁って見える。従って一定の濃度に希釈したラテックスの濁り度(Turbidity)を測定することによってラテックスの粒子径を求めることができる。

3.動的光散乱法(Dynamic Light Scattering法:通常DLS法と略称している。)
ラテックス粒子は水に分散した状態でブラウン運動をしており、その動きは粒子径が大きくなるに従って遅くなる。この性質を利用してラテックス粒子にレーザー光を照射し、粒子からの散乱光のゆらぎを観測する。このゆらぎを光子相関法で解析し、粒子径や粒子径分布を求めることができる。

4.Capillary Hydrodynamic Fractionation法(通常CHDF法と略称している)
CHDF法は、分散粒子がキャピラリー中を流れるときに発生する粒子径分離効果に基づく。
大きな粒子は小さな粒子ほどその中心がキャピラリーの壁に近づけないため、最も流れの遅い流速中を流れて行くことができない。これに対して小さな粒子はキャピラリー壁に近づくことができるため、遅い流速中を流れて行くことができる。よって、大きな粒子は小さな粒子より速い平均速度で流れることになる。また、全粒子の平均速度も液体の平均流速より速くなる。この分離効果は粒子径のみの関数で、粒子の比重や化学的組成に影響されない。この原理を利用して粒子径や粒子径分布を求めることができる。

用途について

Q

耐熱性、耐光性の良い合成ゴムラテックスを教えてください。

A

ラテックスポリマーはさまざまな外的要因(例えば熱、光、オゾンなど)により、変色、硬化し最終的には柔軟性を失います。室温では極めて老化速度が遅いものの、高温加熱により老化が促進されます。一般的に温度が10℃高くなると老化速度は約2倍に促進されるといわれています。SBRラテックスは、他のポリマーよりも比較的、耐熱性、耐光性が劣る面がありますが、老化防止剤などの添加により改善が可能です。
一般にSBRよりもMBRのほうが耐熱性、耐光性が優れていると言われています。

物性比較表を御覧下さい。

Q

合成ゴムラテックスの安定性とは何ですか?

A

実用上必要とされる安定性については、撹拌、移液の際に加わる機械的なショックに対する安定性(機械的安定性)、多種多様な薬品と混合された時の混合安定性(化学的安定性)、沈降、浮遊などによって分離、変質しないこと(貯蔵安定性)などが挙げられます。
合成ゴムラテックスの安定性はポリマー成分、粒子径、界面活性剤などの適切な設計によってコントロールされています。

Q

臭気はありますか?

A

合成ゴムラテックスには、特有の匂いが感じられると思います。
その主原因は例えばSBRラテックスの場合、わずかに残留している未反応のスチレンなどの揮発性有機物質(VOC)のためです。
製品中のVOCにつきましては用途に応じて、弊社製造時の脱臭工程強化などにより出来るだけ低減させる方向で進めております。

NBRラテックスについて

Q

NBRラテックスとは何ですか?

A

アクリロニトリルとブタジエンを主成分とした合成ゴムラテックスのことです。

Q

主な用途は何ですか?

A

ガスケット、オイルシール、研磨材など耐油性が必要とされる分野に使用されています。

VPラテックスについて

Q

VPラテックスとは何ですか?

A

2-ビニルピリジンを使用した合成ゴムラテックスのことです。
弊社のVPラテックスの商品名はPYRATEX(ピラテックス)です。2-ビニルピリジンがもつ極性により優れた接着効果を示します。

Q

VPラテックスはどのような用途に使われますか。

A

主に自動車用のタイヤ、歯付きベルトなど繊維・ゴム複合体の繊維処理剤として使われています。
レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アラミド、ガラスなどの繊維はそのままではゴムと相性が悪くて接着しません。双方と接着機能を有するVPラテックスと熱硬化性樹脂とをうまく配合し各繊維表面に塗布することで、繊維-VPラテックス-各種ゴム間の接着が可能となります。

Q

PYRATEXの粒子径やTgはどれくらいですか。

A

粒子径は約0.1μm、Tgは-50℃です。

合成ゴムラテックスの取り扱いについて

Q

荷姿を教えてください。

A

液体ですので、容器に入れて納入いたします。ローリー(10m3)、トレーラー(14m3)が主体ですが、20m3積載のISOコンテナをはじめ、10m3、5m3等各種コンテナで陸送、鉄道、海上各種輸送をおこなっています。
また、お客様のご使用量にあわせて、1m3コンテナ、最小出荷単位である200Lドラムなど各種対応しております。

Q

生産場所はどこですか?

A

メイン工場である 愛媛工場(愛媛県新居浜市)および千葉工場(千葉県袖ヶ浦市)の2拠点で生産し、お客様に供給しております。

グローバル拠点

Q

保管温度を教えてください。

A

製品温度が5~40℃を保つよう管理するとともに、温度変化の大きい戸外は避けてください。

Q

凍結しても使えますか?

A

一度凍結した場合は、たとえ再分散できても、凍結凝集破壊による変質の可能性があります。凍結しないよう細心の注意をお願いいたします。

Q

タンクでの保管方法を教えてください。

A

皮膜や分離を防ぐため、1日1回1時間程度の撹拌を推奨いたします。攪拌は泡立てない様にお願いします。

Q

合成ゴムラテックスの取り扱い上の注意点はありますか?

A

合成ゴムラテックスは水で洗い流せますが、取り扱いには次の点にご注意ください。

1.合成ゴムラテックス取り扱い時は、ゴム手袋、ゴーグル等保護具を着装ください。

2.合成ゴムラテックスが皮膚、衣服に付着した場合は、速やかに水洗してください。

3.万一目に入った場合は、清水で充分に洗眼、医師にご相談ください。

※また、保管状態によっては経時劣化(腐敗)し、硫化水素や二酸化炭素等の有害ガスを発生するおそれがあるため、作業者が有害ガスによる中毒や酸欠を起こさないように適切な安全対策を講じてください。

Q

もっと詳しく知りたいのですが

A

お問合せフォームへご要望をご記入していただくか直接本社(大阪)・東京のラテックス事業部へご連絡ください。

各種サンプルについてもお気軽にお問い合わせください。

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